「人間は一隅を照らすだけの力量を誰にも与えられていて、この世の中に送られてきた。だから、この仕事を通じて自分の人生を築いていこうと心に決めたら、その一業に徹して5年、10年、15年経ちさえすれば誰もが追従できない領域までなっている。一業に徹し、一隅を照らそうと心がける生き方をしなければならない」(安岡正篤師の言葉)
照隅会は、2012年5月より始まりました。学長講師は、作家の神渡良平先生。
50冊以上もの著書を持ち、年間150回もの講演を行われています。
神渡先生は、38歳の時に脳梗塞で倒れられ、右半身不随となります。
しかし、強い精神力とリハビリで、医者も目を見張るほどの回復をし、
社会復帰を果たされました。奇跡的な病状の回復に、
医者は「もし、五年以内に再発すれば、今度はたぶん助からない」と宣告します。
その時、残された時間は五年間だと痛切に感じたそうです。
文字を書いて表現したいという思いから、ぶら下がって萎えた右手を懸命に
使えるように必死の訓練をされたからこそ、読者の琴線に触れる機微に溢れた
言葉が文章の端々に醸し出されるのでしょう。
必死に回復を願うあせり、苦痛の中で「人生はたった一回きり、どんな優秀な
人もそうでない人も、人生は等しく一回きり。大切に生きよう」と骨の髄まで
教えられたと先生は語っています。
それから四年半、神渡先生は安岡正篤氏についての資料を必死で集め原稿を
書きます。しかし、「はたして無名の作家の本が世間に受け入れられるのだろうか
」と不安の思いであったそうです。自身の名で第一作目となる『安岡正篤の世界』
が評判になり、ベストセラーとなります。
それから、安岡正篤、中村天風、マザー・テレサといった人々の生き方と精神に
肉薄する著書は、読む者の魂を強く揺さぶり、多くの人々の感動を呼んでいます。
「神渡良平 人間学」で先生がお話される人生の啓蒙の原点は、闘病中に骨の髄まで
知らされた「人生は一回しかない」という真実にあるのだと思います。自己の
根源が欲するものに出合えれば、人は困難に遭おうとも前に進む方法を見出すこと
ができるもの。
この人生における実践の知恵を学ぶ場に参加されることは、ご自身の人生と仕事を
同時に磨き高め上げる気づきにつながるものと信じております。
<プロフィール>
神渡 良平 先生 (作家)
鹿児島生まれ。九州大学医学部中退後、新聞記者、雑誌記者を経て独立。38歳のとき脳梗塞で倒れ一時は半身不随となったが、必死のリハビリで再起。この闘病生活中に、人生はたった一回しかないこと、どんな人にもなすべき使命があってこの地上に送られていることを痛感する。
そしてかけがえのない人生を取りこぼさないためには、自分の経験の範囲内で考えることではなく、先人たちが掴んだ人生の知恵を活用すべきことに気づく。闘病中に起草した『安岡正篤の世界』がベストセラーに。以後、次々にベストセラーをうみ出し、講演や執筆に多忙となる。
”一回しかない人生をどう過ごすかは、個々の人間にとって、大きな課題である。人生には思うようにならない場面はしばしば起きるものだが、そのときどう対処するか。それによって自分の人生の主人公になれるか、負け犬になるかが決まる。
幕末の思想家、佐藤一斎は名著『言志四録』で、「天下のこと、もと順逆なく、わが心に順逆あり」と喝破している。「順境や逆境は自分の外にあるのではなく、自分の内にある。自分の弱さに勝ってこそ、世の荒波を乗り越えていける」というのだ。
私はこの言葉を引用して、聖光学院高校の野球部の選手たちを励ましている。天風先生は自分の弱さに打ち克つにはどうしたらいいか大いにヒントになる「心の運用の仕方」を語っておられる。今回も逆境を乗り越えてこられた方々が、天風先生の言葉を実際にどう応用したかを紹介した。(本書「あとがき」より)”
照隅会世話役の岸和幸が本書の中で、その半生を紹介して頂いております。
<代表作のご紹介>